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考察

体験ドリブンと創造的思考

2026-06-28 0

長さ: 長々

読み口: 重

独自性(視 / 論): [R]珍しい / [SR]稀有

 創造的思考に憧れを抱いてる人って一定数いると思うのだが、ならばそれを行使できているかと言えば、割と歯切れが悪くなる人も多かろう。

 実は、世の中で言われるところの創造的思考は、およそ正しく言語化されているとは言い難いのだ。

 何故かと言えば、まずは真っ当に創造的思考に基づいたアイデアを出せることが大前提なので、これが出来てない人が創造的思考を正しく語れるわけがない。さらにアイデアを出せたとして、そのメカニズムを言語化するためには「自分がどのようなステップで今この瞬間、創造的思考を行使したか」を内省できる力が要求される。

 こんなモン、みんなが自動的にホイホイ行使できると思うかね?

 何故憧れる人が多いかと言えば、話は簡単、出来る人が少ないからに他ならない。

 「自称」は山ほどいるものの、ならば本当に「なるほど」と思えた人ってどれくらいいるだろう?
 「わかったつもり」にはなれたけど、全く再現性が無いと不満に思ったことは無いかね?

 まあ、そのへんを実例込みで語っていこうじゃないか。

Contents
  • 技術ドリブンじゃ創造的思考にならない
  • 体験ドリブンに考える
  • 技術には有効射程がある
  • サンプルから読み解く創造的思考のフロー
  • 創造的思考フローのまとめ

技術ドリブンじゃ創造的思考にならない

 のっけから何だが、多くの人が陥りがちなのがこれで、だからこそ創造的思考が希少化されるのだ。

 「技術ドリブン」とか「体験ドリブン」は造語みたいなもんで、別に権威ある偉い人の言葉と捉えず、
 「何を起点や中心に置いて考えを進めるか」ぐらいで捉えておいてほしい。

 「技術ドリブン」の場合、「何らかの技術を起点や中心に置いて考えを進める」となる。

 まあここで、何らかの技術トレンドが起きたりしますわな。

 今だと生成AIでございますな。

 「技術ドリブン」+「生成AI」で生み出されるアイデアはどんなのかと言えば、「とにかく生成AIを使うことを目的とする」ようなアイデアを言う。
 とりあえず「生成AI」と言っておけばいいか、的なやつね。やれ自動化だの自動生成だの自動判別だの、そういうやつね。食傷気味になる程度には目にする機会が多いでしょ。

 そういうのって、大体はそのへんに転がってる典型例を拾ってたり、そもそも生成AIでなくても実現できる話を再発明してたりと、まあ申し訳ないけどロクなアイデアでない可能性が高い。

 言ってみれば、学校の課題の提出物を思わせるような代物である。

 学校の課題ってそれこそ「これを使いなさい」が決まってたりするじゃない。
 そこでは、「何かを解決すること」が命題になってなくて、「指定された何かを使う」ことが命題になってしまう。
 これを「手段の目的化」と言う。「ハンマーを持たされて釘を探してる状態」とも言える。

 一応、お題目上は「何かを解決する」ということにしておけば及第点はもらえるから、そのような主張は掲げるものの、そもそもの出発点が技術ドリブンである以上、設定された命題が最初から違うので、そのアイデアの持つ「解決力」ってのは的を外していて当たり前なのだ。
 学校の課題であれば、それはあくまで練習問題にすぎないので、その結果も織り込み済みではある。

 ところが、社会のプロダクトとして提案するものまでそんな調子じゃ、さすがに情けないわな。

 まさに学校の課題感覚でやってるなら別なんだが、そういう時は間違ってもクリエイティビティの顔しちゃダメですよ。

 創造的思考ってのは、まずは「何らかの機能不全という意味での問題を解決するため」の思考を言う。
 ゲームを始めとするエンタメであっても、そこで発揮される創造的思考とは「既存ゲームだとユーザー体験を提供しきれていない」という機能不全に対するアンサーを生み出すために用いられている。

 間違っても、あなたのノルマをこなすための提出物に箔を付けるためのラベルじゃありません。

 「技術ドリブン」な思考の問題点は理解できただろうか?
 ちなみに、多くのアイデアハッカソンにおける「アイデア」から漂う「学校の課題臭」の発生源も何となくは特定できたのでは無いだろうか。

 まずはそこをクリアしないと、スタートラインにすら立てないのだ。

体験ドリブンに考える

 ということで、技術ドリブンの対極として持ち出すのが「体験ドリブン」である。

 定義に従って言い換えると「体験を起点や中心に置いて考えを進める」ということだな。

 字面通り、起点にも軸にも「技術」は出てこない。体験に即している限りにおいて、使っても良いし使わなくても良い、という程度の立ち位置になるってことだ。

 ここでの体験とは、そのアイデアの利用者、そのアイデアがもたらす解決力を享受する利用者の体験、を指す。
 雑に言えば「ユーザー体験」となる。

 ただ一応言っておくと、ユーザー体験というのは、UI要素の挙動の話じゃないからね。一部界隈では慣習的にそういう意味で使われてるみたいだから、釘を刺しておく。

 もう少し嚙み砕いておくと、何らかの機能不全という意味での問題を解決するためのアイデアが、どのようにして使われ、どのようにして利用者の生活あるいはその周辺の風景を変化させるか、を軸として考えましょう、ということだ。

 未熟なアイデアが陥りがちな特徴に「お題目として掲げるハッピーケースしか考えてない」点がある。
 これも結局は、体験を中心に考え切れていないから起きる。実際に使う風景を考えていけば、ツッコミどころの一つや二つは思いつくはずで、そこに対する先回りが出来ていないのは、考えが浅いと言われても仕方がない。
 「それで?」と言われちゃうアイデアも同じく、そこに何の体験も含まれてなくて、実際にどういう変化が生じるかが考え切れていないから、そうなる。ここを「利用者次第」に逃げちゃダメよ。アイデア出す側がちゃんとイメージできていないといけない。

 まずは「如何なる手段であっても良いから、問題状態が解決された状態における利用者体験を描く」ことから始めるのが「体験ドリブン」な考え方で、「技術ドリブン」とは真逆のアプローチであることは理解できるだろう。

 解決手段が最先端技術である必要は全く無く、そこでの問題状態を分解していくと、実はものすごくカッコ悪く泥臭い物理的手段が最適解だった、なんてことも普通に起きるし、それが利用者体験として問題無ければ解決、という至ってシンプルな考え方である。

技術には有効射程がある

 それでもついつい「技術ドリブン」に陥りがちな理由は色々とあるとは思うが、特に現代の場合は「新しいものの方が必ず優れている」という無自覚な誤謬に陥っているケースが多々あると思っている。

 確かに、新しいものが優れていること自体は否定しないが、しかし見落としてはいけないのが、「その優秀さを発揮できる条件」である。

 例えばスマートフォンを考えてみよう。

 デバイスそのものの優秀さや便利さは、日々多くの人がその恩恵に与っており、反論の余地は無い。
 しかし同時に「電波圏外」「バッテリー切れ」の二条件下では無用の長物となることも常識である。
 さらにアプリ単位で言えば、接続先のWebサービス側がダウンしたために無用の長物化した、なんてのは誰しも一度は体験したことがあるだろう。

 このように、特に技術には「有効射程」とも言うべき暗黙的条件がある。

 そしてこの有効射程というのは、新しさに合わせて際限なく広がるのではなく、新しさに合わせてシフトしていく仕組みになっている。

 と言うのも、社会の発展に合わせて最適化した形で開発されるのが「新しいもの」である以上、その時点での社会インフラが暗黙的前提条件として組み込まれていくのは原理的に避けられない。
 また「より良くより安く」を実現するためにも、その優秀さを発揮するための前提部分を外部に委譲せざるを得なくなっていく。社会の複雑さが増すほどに、さすがに逐一自前で車輪の再発明などしていられないからだ。

 PCやスマホアプリにおけるOSバージョン指定、GoogleやMicorsoftやXのアカウント連携必須なんてのは、前提条件の定番と言える。
 さらにはサービス機能の本丸に何らかの大手クラウドサービスなどを使っているのも珍しくないが、これだって前提の外部委譲そのものである。

 いずれも、大元の前提が優秀さを支えており、前提側の変化一つでひっくり返される可能性を抱えているのだ。

 要するに、「新しいものは優れている」は正しいとしても、「いかなる条件でも優れている」は正しいとは限らない、という論理が成り立つ。
 どうということはない、つまんない当たり前の論理である。

 なのだが、ウカウカと「技術ドリブン」に陥いると、後者を全力で見落としがちだ。

 「技術ドリブン」で提示されたアイデアを実際に利用するためには、理想的なネット環境と充分に高いPCリテラシーが要求される、なんてのは良くある話。
 ものすごく温室環境的アイデアが生まれる背景には、技術の有効射程の誤認が大きく作用していると見て差支えは無いだろう。

 ちなみに、最新技術は次々と発表されるのに、未だにレガシー技術を置き換えられない理由も、結局は有効射程の問題が解決されないからだ。
 最新技術の有効射程と、レガシー技術の有効射程の差を埋められる人材が双方にいない。
 何より、有効射程の問題と認識できなければ、中間に楔を打ち込む人材の必要性も見えてこないからだ。

サンプルから読み解く創造的思考のフロー

 ここまでで背景は理解できたと思うので、いよいよ創造的思考の具体を語っていきたいと思う。

 今回は下記に示すゲーム仕様を教材としたい。
 claudeと議論して、仕様っぽくまとめたテキストだ。

ゲームデザイン仕様書


コンセプト

ヴァンパイアサバイバーズライクの「雑魚ラッシュ×成長」構造に、ロックマンの「ステージ選択×武器解放×属性相性」とサイヴァリアの「掠りによる経験値獲得」を統合したアクションローグライト。

設計の核心:「近づく」という単一行動に、リスク・リターン・成長・戦術の全てが収束する。


コアループ

初期武器選択
    ↓
ステージ選択(ボス弱点確認)
    ↓
選択枠構築(レベルアップ時に出現する武器を事前選択)
    ↓
wave開始(雑魚ラッシュ)
    ↓
掠りでEXP獲得 → 基本ステータスUP
通常EXPでレベルアップ → 武器・パッシブ選択
レベルアップ爆発 → 周囲の敵を一掃・空間確保
    ↓
ボス出現 → 属性相性・基本ステータス・武器構成で戦況決定
    ↓
撃破 → 新武器解放 → 次ステージ選択へ

主要メカニクス

1. 掠りシステム(サイヴァリア由来)

  • 敵弾・敵本体に触れるギリギリの距離を保つことでEXPを継続獲得
  • 獲得EXPはその敵の接触ダメージ設定値に比例
  • 雑魚:低ダメージ → 低EXP(ローリスクローリターン)
  • 中ボス:中ダメージ → 中EXP
  • ボス:高ダメージ → 高EXP(ハイリスクハイリターン)
  • 掠りEXPは基本ステータス(HP・移動速度・基本攻撃力)の一時強化に充当
  • ステージ内限定有効。ステージクリア後はリセット
  • 上限値=現在の周回メタ進行レベル(無尽蔵強化を防止)
  • クリア時の掠り量に応じて、微量の周回経験値ボーナスを付与

2. レベルアップ爆発(サイヴァリア由来)

  • 通常レベルアップ時、自機周囲に攻撃判定が発生し周囲の敵を一掃
  • 詰み状態(敵に囲まれた状態)でのレベルアップが脱出手段として機能
  • 上級者は「EXPをギリギリまで溜めてから最密集タイミングで起爆」という能動的運用も可能

3. 近距離攻撃補正

  • 敵との距離に反比例して自機の攻撃ダメージが上昇
  • 属性相性が不利な場合の補完手段として機能
  • 十分に育ったキャラクターで敵に突撃する「無双プレイ」の快感にも直結
  • 掠り(EXP獲得)・近距離補正(火力上昇)・接触ダメージリスクが同時に発生する設計

4. 属性相性システム(ロックマン由来)

5段階のダメージ倍率:

ランク倍率意味
A200%明確な弱点
B150%有利
C100%等倍
D70%不利
E40%ほぼ効かない
  • Eでも0%でないため詰み配置が存在しない
  • 近距離補正と掠り強化で属性不利を技術で補える設計
  • 弱点武器なし縛りが苦行にならない

5. ステージ選択システム(ロックマン由来)

  • 複数ステージから任意の順で攻略
  • 各ステージのボス弱点属性が事前に確認可能
  • 敵レベル設定:クリア済みステージ数=未クリアステージの敵基本レベル
  • どの順番で攻略しても未クリアステージは常に適正難度で揃う
  • クリア済みステージの敵レベルはクリア時点でロック(狩場として機能)
  • 最終ステージは選択枠を大幅拡張してデッキ構築フェーズとして機能

属性構造(仮:8属性・8ステージ構成)

ステージ数=ボス数=属性数を8とする。属性相性は円環構造(Aライン)を基本とし、補完ライン(Bライン)を複数追加することで次点ルートを成立させる。

Aライン(相性ランクA/200%):一方向円環

炎 → 氷 → 雷 → 風 → 土 → 水 → 光 → 闇 → 炎

隣接する属性に対して明確な弱点関係が成立する。ロックマン的な「正解ルート」に相当。

Bライン(相性ランクB/150%):補完斜線(例示)

炎 → 風
雷 → 水
土 → 闇
光 → 氷

円環を飛び越える形でいくつかの有利関係を追加する。弱点武器(Aライン)を持っていなくても次点武器(Bライン)があれば十分戦える。

プレイヤー行動への影響

  • 初心者:円環だけ意識して隣接ボスを順番に崩す
  • 中級者:Bラインを活かして攻略順の自由度を上げる
  • 上級者:A・B両ラインを把握した上で選択枠を最適構築する

Bラインの配置は「知識の報酬」として機能し、攻略マップを暗記し始めた頃に自然に気づく設計が望ましい。全属性関係図はゲーム内で参照可能にしておく。

6. 武器システム(ロックマン由来)

初期武器:ゲーム開始時にプレイヤーが選択(解放済みの中から)

ステージ開始前の選択枠構築:

  • パッシブ系・基本武器は固定
  • 残り数スロットをプレイヤーが選択(レベルアップ時の出現候補)
  • ボス弱点を見て事前に組む「計画性」と、レベルアップ時の抽選による「即興性」が共存

武器解放:ボス撃破で新武器が解放され、以後の選択枠に追加可能

最終ステージ:解放済み全武器から自由構築するデッキ構築フェーズ


成長軸の分担

成長軸持続性内容獲得手段
メタ進行周回成長永続基本ステータス土台・武器解放・選択枠拡張周回・ボス撃破
掠りレベルアップステージ内限定基本ステータス一時補強(上限=周回成長値)技術的行為
通常レベルアップステージ内限定武器・パッシブ選択通常EXP

周回成長=土台、掠り=その場の技術による底上げという役割分担により、周回廃人有利になりすぎず、技術で周回数を圧縮できる構造。


意思決定の時間軸

タイミング判断内容
キャンペーン進行攻略順・武器解放優先度
ステージ選択時どのボスから崩すか
ステージ開始前初期武器・選択枠構築
ステージ中距離・掠りタイミング・レベルアップ起爆タイミング

習熟度による体験変遷

初期周回
火力不足で敵に飲まれながら必死に掠って凌ぐ。詰みかけた局面が掠りEXPの稼ぎ時になる逆転体験。

中期周回
余裕が出てきて掠りを意識的に運用し始める。弱点武器の有無を見てステージ選択を考えるようになる。

高周回
基本ステータスが高いので敵に突撃して掠り上限到達→レベルアップ爆発連鎖→殲滅という能動的無双が成立。


自己調整機能(外部難度調整不要)

  • クリア数=未クリア敵レベル:攻略順に依らず適正難度が保たれる
  • 接触ダメージ=掠りEXP:リスクとリターンが数値的に一致
  • 掠りEXP上限=周回成長値:初回から最終まで行ける事態を防止
  • レベルアップ爆発:詰み状態を脱出機会に変換
  • 属性相性AからEのグラデーション:完全詰み配置が存在しない

未実装検討項目

  • レベルアップ爆発の範囲・威力の調整(強すぎると掠り無双、弱すぎると詰み回避不能)
  • 掠りEXP→基本ステータスの配分比率(HP寄り・攻撃力寄り等のカスタマイズ余地)
  • 周回経験値ボーナスの還元率
  • 最終ステージの選択枠上限数

本仕様は会話による設計検討から抽出。世界観・グラフィック・音響等は未定。

 一言で言うと、「ヴァンサバ×ロックマン×サイヴァリア」なゲームって成立できるかな? を考えた結果である。

 これを教材として、創造的思考を紐解いていこう。

 まずは冒頭のコンセプトである。

ヴァンパイアサバイバーズライクの「雑魚ラッシュ×成長」構造に、ロックマンの「ステージ選択×武器解放×属性相性」とサイヴァリアの「掠りによる経験値獲得」を統合したアクションローグライト。

 これはテキストとしてまとめた結果、受け手向けに要約文が先頭に来た形であるので、発想の起点のようで起点でない。結果論である。
 まずここを読み違えてはいけない。

 コアとなっているのは所謂「ヴァンサバライク」と言われる、身も蓋も無い言い方をすれば「敵が大量に出てくる全方位型シューティングゲームに、ランダム抽選パワーアップシステムを組み合わせたゲーム」である。

 さて、このゲーム仕様における「創造的思考」のポイントはどこだろうか?

 創造的思考=オリジナリティではないからね。それは俗説で勘違いなので捨てるように。

 ここでは、コアに据えている「ヴァンサバライク」が抱える問題点に対するアンサー、を言う。

 これを思い付くためには、多少なりとも「ヴァンサバライク」をプレイした経験が必要。あるいは、プレイ風景を観察した経験が必要。
 そして、そこに流れる構造を批判的・分析的に読み取る思考力が必要だ。
 間違っても「これはそういうもの」と思ってはいけない。その時点で創造的思考という観点ではゲームオーバーである。

 ここでは以下を問題点として設定している。

  • 何ステージかプレイすると、同じことの繰り返しになりがち
  • ステージが進んでも、ステージごとの設定時間が長くなるだけで変化に乏しい
  • 基本的に一本道進行
  • 詰み状態の形が「こちらの攻撃能力に対して敵耐久が高くなり、倒しきれずに敵に埋め尽くされる」に収束しており、プレイヤースキルの問題ではなくなる
  • 結局、周回を重ねて基本能力を上げるという、RPG的成長を要求される

 これを「ヴァンサバとはそういうもの」とした時点で、改善の芽が永久に絶たれるのは理解できるだろう。

 しかしさりとて、これらの問題点を「技術ドリブンで」解決しようとすると、対症療法的にデータで何とかバランス取りをしようとして、一部分は成功する面はあっても、根本的には枝葉いじりで終わる。
 キャラを追加するだの、武器性能を調整するだの、パラメータの成長曲線を調整するだの、そういう対処ね。

 創造的思考の観点から言えば、ここで「体験ドリブン」に考えないといけない。
 問題点に対するアンサーを「プレイ体験」「プレイ風景」としてまずは考えましょう、ということだ。データなんて枝葉は後回しでいい。
 この時点では、それこそ自然言語で考えなさい、ということなんだ。

問題点真意解決策
何ステージかプレイすると、
同じことの繰り返しになりがち
ステージ変化が乏しい
ゲーム進行が単調
ステージごとにテーマを設定
ステージが進んでも、ステージごとの
設定時間が長くなるだけで変化に乏しい
ただステージ時間を延ばすだけはNG
基本的に一本道進行ステージ選択の導入
詰み状態の形が「こちらの攻撃能力に
対して敵耐久が高くなり、倒しきれず
に敵に埋め尽くされる」に収束しており、
プレイヤースキルの問題ではなくなる
アクションのようで、
実態はRPG
詰み状態からの逆転手段を設ける
結局、周回を重ねて基本能力を上げる
という、RPG的成長を要求される
RPG的成長への依存度を緩和する

 雑にでもいいので、最初に挙がった問題点の真意を取り出してグループ化しつつ、「解決策の方向性」を打ち立てる。
 ここで下手に「完全な解決策」を考えようとしてしまうと、いとも簡単に「技術ドリブン」に転がってしまう。技術の出番はもっと後である。
 まだまだ我慢して自然言語で論理だけで考えるフェーズである。

 ここで挙がった解決策と、問題点の真意(カテゴリー)を並べて眺めてみる。

 ステージ変化の乏しさへのアンサーから、ロックマン方式はどうか? という思い付きが生まれる。
 実態はRPGである性質と、詰み状態からの逆転というアンサーから、サイヴァリア方式なんかどうだろう? という思い付きが生まれる。

 言ってしまえば、発想のパクリではある。

 しかし創造的思考ってのは、原理的にはこういうことで、他から解決策を引っ張って来る、という性質があるのだ。

 俗説として、創造的=世の中にないアイデア、というイメージがあるが、これはあまりにも解像度が低い。

 それは、「たまたま」解決策が「世の中に無い」ような問題であった、というだけで、結果論に過ぎないのだ。
 大衆向けにセンセーショナルなストーリーとして都合が良いので、そういう結果論を持て囃した結果、創造的思考の俗説が広まった、という経緯だと思われる。

 ここまでの思考の経緯を辿れば、パクリではあるが、単純なパクリとはルートが違うことに気付いた人もいるだろう。

 問題点と解決策のセットから、他との類似点に気付いた上で、その類似点を一言で言い表すパッケージとして「パクリ」と称しているのであって、ただ単に他のゲーム要素を引用するのとは出発点が違っていることは理解できるだろうか。

 最初に挙げた問題点が異なっていたり、それに対して考えた解決策が異なれば、ロックマンやサイヴァリアとの接続は起きない。
 さらに接続を起こすためには、解決策として挙げた断片的アイデアを、「それぞれのゲームの構成要素との類似点」として読み取れなければいけない。

 ヴァンサバライク文脈で議論しているところに、ロックマンやサイヴァリアを持ち込むためには、ジャンル横断できるだけの柔軟性と、他ジャンル作品を構成要素にバラせるだけのゲーム理解が必要である。

 ちなみにこれが、本物の抽象的思考というやつである。

 目先の議論対象を抽象的表現に変換するだけが抽象的思考ではない。

 目先の議論対象を抽象の世界に持ち込んで、その抽象の世界では他の知識も抽象化されるので、そこで全く異なるジャンルとの接合を行った上で、もう一度具体の世界に戻すことを言う。
 異ジャンル接合と具体への再構築こそが、抽象的思考の真意である。

 そしてこれが、創造的思考の手順の一つに組み込まれているのだ。

 仕様の話に戻ると、このようにして問題点の解決策を別ゲームに接続できてしまえば、発想は一気に具体的に広げられる。
 もちろん、ただ単純に別ゲーム要素を取り込めば良いわけではないものの、別ゲームにおける「体験」をどうやって融合できるか、という方向でアイデア議論のギアが切り替った瞬間は理解できただろう。

 ここから先はより具体的なアイデアを盛り込んでいくわけだが、しかしやはりまだ「体験」をメインに据え続ける期間が続く。
 別ゲーム要素を取り込むは良いが、それがちゃんと「どういうプレイ体験、どういう面白さに繋がるのか」は、自然言語で論理として考えていかなければならない。
 さらに、それが新たな問題点を生み出しては本末転倒なので、自分のアイデアに対しても批判的思考を利かせて、ある程度の想定解も持っておく。そこまで厳格である必要はなく「そりゃそうなるだろ」レベルの穴ぐらいは初手で塞いでおこうね、という話である。

 仕様の最後の方にまとめられている「自己調整機能」の項に挙げられているシステムが、そういった穴埋めの結果であると読んでもらって差支えは無い。

 後はもう枝葉の話というか、説得力の話になっていくので、適当なところで基本仕様として閉じておく。

 ここまで来てようやく、「技術」だの「商売」だのの出番である。

 逆に言えば、ここに来るまでに「技術」や「商売」が前に出しゃばると、創造的思考は脇に追いやられて、「今出来るもの」か「今売れるもの」に収束させられる。まさに「そりゃそうなるだろ」だ。

創造的思考フローのまとめ

 最後に簡単にまとめておこう。

1.体験や観察から、問題点を見つける
↓
2.問題点を分類し、解決策の方向性を考える
↓
3.問題点と解決策から、他ジャンルも視野に入れて既存アイデアとの類似点を探す
↓
4.見つかった既存アイデアを解決策に組み込む
  この時、必ず「どういう体験に繋がるか」という視点で解決策へ融合させる
↓
5.新たな問題点へのアンサーも考慮に入れつつ、説得力ある形にまとめあげる
↓
6.技術や商売を呼んでくる

 大体はこんな流れで考えることが出来れば、創造的思考を実践できていると評価できるだろう。

 つまづきポイントはいくつかあるが、まずは1と2の段階で、「そういうもの」と見過ごした時点でアウトである。
 ゲームブックの超序盤でBAD ENDに進むレベルの話である。
 これはもう、視野を広げて、日々の固定観念を揉みほぐしましょう、ぐらいしか対策は無い。

 次が3である。
 ここでも何のかんので知識の量と幅が要求されるし、それらを「そのものズバリ」の形で把握するのではなく、構造的に解体する視点が必要だ。でないと、類似点に気付くことが出来ない。

 そして落とし穴となるのが4と5で、ここが甘いと「それで?」と言われたり、素朴な一言で粉砕されたり、まあ所謂「浅い」「惜しい」アイデアに終わるかどうかを左右する。
 ここでちゃんと「体験ドリブン」に考えられているかであり、1がちゃんと自分の体験なり、他人の体験の観察なりから入れているかを占うフェーズであると言える。

 最後に6だが。呼ぶのが早いと大体おかしなことになりがちなので、タイミングには注意することと、技術側も商売側も「創造的思考のメカニズム」を理解していることが望ましいのは間違いない。
 いくら起点のアイデアが創造性に溢れていても、その先があまりにも「いつも通り」で動いちゃうと、アイデアがどんどん目減りしていくのは容易に想像できるだろう。

 まあ実際問題としては、6が一番の難所になるだろう。

 と言うのも、創造的思考が誤解されがちで、俗説で汚染されているとすれば、まずはここを啓蒙するメンド臭さをクリアする必要が生まれるからだ。
 このメンド臭さをクリアするために、アイデア側が技術や商売まで考えてあげないといけないとすれば、それってどんだけ余計な能力を要求してんのさ、という話であり、日本でイノベーションが起きない理由の核って、創造性という概念の汚染にあるんじゃないの? と思う。


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