まあちょっとした実験。
素人お絵描きの中で、ちょいと背景絵を考えることがあって、そこにChatGPTを絡ませてみましたという話。
決して「そのものズバリの答えを生成しました」系の話ではない。
1.まずは素材から
大体こんな感じの背景にしようかなあ、の起点は普通に写真から。
これは適当な写真素材サイトから拝借したものを使う。

ではここから、ChatGPTを使って段階を踏んで生成された絵を列挙していく。
①「漫画っぽい線画にしてみて」

②「もうちょっと線を減らして」

③「地面の茂みの数を減らして」

④「遠近感が成立するギリギリまで線を減らして」

⑤「この線画に色を乗せてみて」

さて、ここまでを肴に、背景絵の表現について考えてみよう。
2.楽しい考察(モノクロ編)
最初の指示が「漫画っぽい線画」ということで、まずはモノクロでどうなるか、を見たかったのがある。いきなり色付きだと、背景が背景に見えるメカニズムが追えない。
写実に寄せて線を増やせば、そりゃあ元の写真の情報量に近づけられるわけで、そういう志向であれば①~②が参考になる。
逆に、より漫画やアニメを志向した場合は③~④が参考になるだろう。
ここでは、③~④の路線で話を進める。
最初に生成されたもの(①)は、粗いタッチながらも非常に写実的な代物。なんか勝手に集中線が足されてるのは不問とする。見るときは差っ引いて認識するよう、各自の脳内で処理していただきたい。
まあ確かに写実的ではあるのだが、作画コストが激高なのは素人目にも伝わってくるので、少しずつ線を減らしていった結果が②~④になる。
ここでポイントとなるのは③の指示、「地面の茂みの数を減らして」だ。
遠近感を手軽に演出する方法として、地面にオブジェクトを置く方法がある。スネ吉兄さんもそう言ってる。
ここでは、元写真におけるブッシュ(茂み)だ。
これを手前から奥にかけてサイズを徐々に小さくしていけば、見えるモノの大きさという手がかり情報によって、観る人は遠近をそこに認識できる。
まあところが、これも一つの作画コストとしてカウントされるので、いつもこれに頼り切るのも良くない。必ず何かを置かねばならない、という制約も生んでしまう。
よって、出来るだけ減らしてもらったわけだ。
さらにその流れで興味が湧いたので、線画の最終指示としての④、「遠近感が成立するギリギリまで線を減らして」に繋がる。
モノクロにおいて、遠近感を表す線情報はどこまで削ることが出来るのか、という問いかけだ。
これによって、地面の茂みは近距離のみになり、中距離~遠距離にはオブジェクトは明確に描かれなくなる。
オブジェクト無しで遠近を表現するためにはどうするかと言うと、まあ教科書的な話で行くと、遠くに行くに従って空気の層が横たわるので、詳細がぼやけていく、という話になる。どう呼ぶかなんてのは本題じゃないので、知ってる人は適当に呼べば良い。
この観点で変遷を見ていくと、②→③→④に進むにつれ、ちょうど中央付近、地面と岩山の境界線が省略されていくのに気付く。
地面の茂みを省略させたので、その代わりに遠方をボカす効果が適用されたのではないかと推察する。
モノクロで①~④のように線で描画する路線では、おそらくこの辺が限界と思う。これ以上簡略化すると、本当の意味での「漫画絵」になっていく。
もちろん、線ではなくて面で表現する路線もあって、その場合はまた別の簡略化の地平がある。
さて、では①~④を受けて、色を乗せてもらったのが⑤なのだが、ここまでの変遷と比べて気付いたことがあるはずだ。
地面と岩山の境界線が復活、というか、色の境界線によって結果的に境界が鮮明になっている、ということだ。
モノクロでは使えた、境界線の省略という技法が使えなくなってるわけだ。
その代わりに、またもや茂みが復活してしまっている。
ううむ、そんな指示はしてないんだけど、逆に描くなとも言ってないので「出来る方向に」再解釈されたということだろう。
3.楽しい考察(カラー編)
さて、色を乗せることで、モノクロにおける遠近の手法がそのままでは使えなくなる。これはまあ当たり前と言えば当たり前だ。これはむしろ、モノクロがいかに観る側に解釈をカバーしてもらっている部分が多いかを表している。それこそがモノクロ技法であり漫画文法というやつだ。
色を乗せた場合でも、それが簡略化された絵である限りは、観る側に解釈をカバーしてもらう部分が必ず含まれてくる。
それが何かを追っていこう。
⑤において、茂みが復活してしまったのは前述の通り。せっかく線を減らしたのだから、出来ればその路線で色を乗せてもらいたい。なので、再度注文を付けてみる。
⑥「地面の茂みを排除した状態で色付きの絵を作るとどうなるか?」

さあ、茂みという、遠近感を演出するお手軽オブジェクトが一掃された。
未だに残っている集中線が遠近表現の助けになってはいるものの、しかしこれでも地面と向こうの岩山という遠近はしっかりと表現できている。
よく見ると、色の境界こそあれど、主線だけを見れば④の路線、つまり省略方向に進んでいることもわかる。とは言え、モノクロの時に比べれば色の境界線の方が圧倒的に強いので、その効果は限定的であるのも判るだろう。
では、我々はこの絵のどこに遠近を見ているのだろうか。
一つは、地面の塗りがうっすらと粗いグラデーションになっていること。これで手前から奥に向けての変化が見て取れるため、これが遠近の手がかりとして作用している。が、実際に描いてみると判るが、それだけでは弱い。のっぺらぼうな平面を遠近と認識させるのは、かなりの文脈的支援を要する。
ならば何がと言えば、もう一つの要素がむしろ主役で、同じく地面にうっすらと描かれた地形の流れだ。地面の凹凸表現とも見えるし、砂の流れとも見える線だ。
これをよく見ると、手前(近距離)は右手前から左奥に向けての斜めの流れになっているが、すこし奥(中距離~遠距離)になると、その流れが水平になっていることが判る。
遠方になるほど縦方向の圧縮が強く働くようになるので、遠方ほどペタンコの線に見える、を表現したのがこの絵ということになる。
もちろん、近距離の流れも一種のオブジェクトとして機能していて、左奥に向かってのパースがうっすらと表現されていることになる。
単純な一点透視でないのもポイントで、この路線なら押さえるところを押さえれば、厳密でないフリーハンドでも描けそうに見える。
さらにその観点でモノクロ絵の③④を改めて見ると、この時点でもその方法が採られていることが判る。(ただこの時点では、元写真でも見て取れる地面の流れを線画化しただけという見方もできる)
ついでに、岩山の描き込みも何気に細かいが、しかし細部は判別できませんよ、ぐらいの省略も働いている。
順を追っていくつかの絵を生成することで、線や塗りの意図が読み取りやすくなっていることが判るだろう。もし解釈材料が足りないと思ったら、バリエーション違いを生成すれば良いのだ。
ついでに、別路線であるところの、面で表現する方向でもいくつか生成してもらった。注文内容が不明瞭なのは、その後の考察の対話から派生したものなので、明確な指示として抽出できなかったからだ。
⑦面構造で遠近表現

⑧面構造で遠近表現+線画路線のハイブリッド

求めてる作風とかテイストによりけりだが、いずれにしても、地面の流れでの遠近表現になっていることは見て取れるだろう。
⑦に至っては、陰影をオブジェクトとして使っているとも取れる。
また、⑧についてはまたもや茂みが復活しているが、使い道としては遠景のみで、ペタンコになった水平線の延長で使われている。
ラフに生成したものであるのも手伝ってか、それぞれから読み取れる距離感が微妙に違って見えるのも面白い。大きさを比較できるものが無いためで、これはこれで別の考察ネタとなる。
このへんまで来ると、その仕組みがいくらか理解できているため、背景絵の見え方も変わってくる。「その線が何のためにあるのか」が判ってしまえば、試行錯誤する際のポイントも明確になり、「何を足して何を引けばそれっぽく見えるのか」の理解に一歩も二歩も近づけたことになる。
答えを作ってもらうだけではダメだぞー
これぐらいシンプルな要素に絞って段階を経て絵を生成させることで、「その絵にとって何が決め手になるか」を考察するためのサンプルを作ることが出来る、ということだ。
答えを出してもらうのではない。見比べて何が変わったかを理解するためのサンプルだ。解説本で語られていることかも知れないが、やはり技術というのは実際に試行錯誤する体験の有無で、その理解度や定着度は大きく変わる。応用力と言っても良いだろう。
背景も自分で描きたい場合は当然のことながら、それこそ生成した背景を使う場合でも、人間の見た目感覚合わせな調整が必要になってくる。
今回のように風景写真ベースで背景を描くと、そのフォーカスの違いが問題になるからだ。その絵のどこに焦点が合っているのかに合わせて、背景をボカしたり省略したりといった、手描き的なセンスが要求される。
そうすると「どうやってそれがそのように見えるのか」の仕組みを知ってることがどれだけ重要かは想像できるだろう。
その仕組みを知らないまま、いくら生成AIさんに絵を作ってもらおうとしても、外しちゃいけないポイントが押さえられないことになり、結果としてガチャになる。
この仕組みに触れるためのサンプルを作ってもらうための生成AIという使い方は、素人絵描きにとって最も建設的な使い方の一つじゃねえかと思った次第。
副産物的にいいのが出来たら、これはこれで一つの資料になるので、まあ悪くはないんじゃないかと。
目的と言うか、目指す作風とかテイスト合わせで色々と試してみると面白いんじゃなかろうか。


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